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アスベストの健康被害のことがよくわかるサイト【アスサクラ】 » アスベストの基礎知識 » 建設型アスベスト訴訟とは
更新日:2023/04/26

建設型アスベスト訴訟とは

一時期ニュースでも多く取り上げられていたアスベストによる健康被害。アスベスト含有建材を扱う建設現場で働いていた元作業員および遺族が、国および建材メーカーに対して責任を追及する裁判を起こしたのが「建設型アスベスト訴訟」です。

ここでは、アスベストと建設業の関係をはじめ、訴訟の概要や最高裁での判決、アスベスト被害者への救済措置などについて解説します。

アスベストと建設業の関係

建設業におけるアスベストの用途

アスベストは耐熱性・耐久性・耐摩耗性・耐腐食性・絶縁性などの特性に優れていることから、健康被害が問題視されるまでは建材の原料として重宝されていました。国内で消費されていたアスベストのほとんどは輸入に依存しており、輸入されたアスベストの約8割が吹付材や保温材、断熱材、スレート材などの建材に用いられていたとされています。

アスベストの輸入量は第二次世界大戦の影響で一時的に途絶えたものの、1950年以降から増加し、1974年には約35.2万トンものアスベストが輸入されています。このように建設業ではアスベストを含む建材を多く取り扱っていたため、建設作業に従事していた元建設作業員のアスベストによる健康被害が問題となっているのです。

アスベストによって引き起こされる健康被害

アスベストは非常に細かい繊維をしているため、空中に飛散・浮遊しやすい性質を持っています。人体に吸収されると一部は体外に排出されるものの、排出されなかったアスベストは肺の組織内に長期間滞留。それによって肺の組織が傷つけられ、石綿肺や肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚を引き起こすと考えられています。

アスベストによる健康被害が近年になって顕在化している理由は、長い潜伏期間を経て発生するため。たとえば肺が線維化する石綿肺の潜伏期間は約15~20年、悪性中皮腫だと約40~50年の長い潜伏期間を経て症状が発生する場合があります。

建設型アスベスト訴訟の概要

建設型アスベスト訴訟は、建設作業に従事していた元建設作業員らが、国および建材メーカーに対して賠償を求めた裁判のことです。アスベストの有害性を知りながら建材メーカーは作業員に何の警告も行わず、アスベスト含有建材の製造・販売を続け、利益を上げていました。実際に1995年頃の国内のアスベスト消費量のうち、約9割を建材が占めていたほどです。

また、国もアスベスト含有建材の製造・販売に対して適切な規制権限を行使していなかったため、国および建材メーカーの責任を問うための集団訴訟が2008年に東京地裁で提起されました。この集団訴訟を皮切りに、札幌や仙台、さいたま、横浜、京都、大阪、福岡の地方裁判所でも、元建設作業員や遺族らによって同様の提訴がなされています。

建設型アスベスト訴訟の最高裁判決が出される

2008年から争われている建設型アスベスト訴訟ですが、2021年5月17日に4つの建設アスベスト訴訟(横浜訴訟・東京訴訟・京都訴訟・大阪訴訟)について初めて国や建材メーカーの責任を認める最高判決が出されました。

この判決では屋外作業についての責任は否定されたものの、1975年10月1日~2004年9月30日までの間に屋内作業に従事していた元建設作業員(個人事業主・一人親方も含む)および遺族に対し、国の賠償責任が認められています。また、一部建材メーカーについても、建材の警告表示を怠ったとして元建設作業員および遺族に対しての賠償責任が認められました。

最高裁での判決の翌月2021年6月9日には、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立。長く争われた建設型アスベスト訴訟ですが、法の整備によって建設アスベスト被害者への救済が大きく前進したのです。

最高裁で賠償責任が認められた職種

最高裁で賠償責任が認められた主な職種は以下の通りです。

  • 大工
  • 内装工
  • 電工
  • 吹付工
  • 左官工
  • 塗装工
  • タイル工
  • 配管工
  • ダクト工
  • 空調設備工
  • 鉄骨工
  • 溶接工
  • ブロック工
  • 保温工
  • 鳶工
  • 墨出し工
  • 型枠大工
  • 解体工
  • はつり工
  • 築炉工
  • エレベーター工
  • サッシ工
  • シャッター工
  • 電気保安工
  • 現場監督

ちなみに、上記の職種は国からの給付金の支給要件である「特定石綿被害建設業務労働者等であること」を判断する際の目安のため、それ以外の職種に対する賠償責任が否定されているわけではありません。あくまでも参考程度に捉え、自身が該当するかどうかについては、建設型アスベスト訴訟に関する法律に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

建設アスベスト被害者への給付金支給に関する法律が成立

最高裁判決で国と建材メーカーの賠償責任が認められたことを受け、2021年5月18日に厚生労働大臣と原告団・弁護団との間で基本合意書が締結。2021年6月9日に「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、2022年1月19日に完全施行されるに至っています。

この法律の成立によって、建設アスベスト被害者および遺族は損害賠償請求訴訟を起こさずに国から最大1300万円の給付金を受け取ることが可能になりました。給付金の対象となるのは過去の一定期間内にアスベストにさらされる建設業務に従事しており、石綿肺や肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚の診断を受けている方です。

最近の建設型アスベスト訴訟の概要と判決

アスベストによる健康被害を受けたとして建材メーカー16社に損害賠償を求めていた集団訴訟に対し、京都地裁は2023年3月23日に建材メーカー5社の責任を認め、あわせて2億2400万円余りの賠償を命じました。

提訴したのは、建設現場に従事していた70歳~81歳の元建設作業員など4人と亡くなった元建設作業員26人の遺族です。判決では、建材メーカーは製造・販売した建材の危険性や回避する手段について警告義務があったと指摘し、建設現場で使用されていた可能性が高い市場シェア10%以上の製品を製造・販売していた建材メーカー5社の責任を認めています。

ただし、解体工だった3人の原告については「建材メーカーは建物の解体に関わる立場にないことから警告義務を負っていたとはいえない」と訴えを一部退けており、原告全員の訴えが全面的に認められるまでには至りませんでした。

工場型アスベスト訴訟との違い

アスベスト訴訟には大きく分けて建設型アスベスト訴訟と工場型アスベスト訴訟の2つがあり、主な違いは働いていた環境です。

建設型アスベスト訴訟が建設現場で従事していた元作業員・遺族による裁判なのに対し、工場型アスベスト訴訟はアスベストを含む製品の製造工場で従事していた元労働者・遺族が国に対して賠償を求めている裁判になります。

最高裁判所は、2014年10月19日に国が局所排気装置の設置義務付けに係る規制権限の行使を怠ったという判断を示しています。工場型アスベスト訴訟の結果を受け、国は和解要件を制定。国に対して国家賠償請求訴訟を提起し、一定の要件を満たすことで賠償金の請求が可能になりました。

訴訟を提起せずに給付金を請求できる建設型アスベストと違い、工場型アスベストは訴訟の提起が必要です。

まとめ

アスベストによる健康被害が問題となり、元建設作業員および遺族によって提起されたことから始まった建設型アスベスト訴訟。現在は建設アスベスト被害者に対して最大1300万円の給付金を支給する法律が成立し、金銭的な救済が受けられるようになっています。

給付金の受け取りは、法律で認められた建設アスベスト被害者の権利です。アスベストによる健康被害に苦しんでいる、もしくは亡くなった家族が給付金の対象になるかもしれないという場合は、弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

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